「会社を子どもや従業員に引き継ぎたい」「第三者への譲渡を検討している」「事業を買い受けて成長につなげたい」。そのような場面で確認したい制度の一つが、事業承継・M&A補助金です。
この補助金では、承継の方法や使いたい経費によって、検討する枠が異なります。売り手か買い手か、承継前か承継後かを整理してから、申請条件を確認することが大切です。
この記事では、主な支援枠と、申請前に確認したいポイントを行政書士が解説します。
情報確認日:2026年10月22日。第16次公募の公式情報を参考にしています。同公募の申請受付期間は2026年10月2日~11月6日17時です。申請時には、対象となる枠・類型の最新公募要領をご確認ください。
事業承継・M&A補助金とは?
中小企業等の生産性向上や持続的な賃上げに向けて、事業承継に伴う設備投資、M&Aの専門家活用、引継ぎ後の経営統合などに必要な経費の一部を支援する制度です。
第16次公募には「事業承継促進枠」「専門家活用枠」「PMI推進枠」「廃業・再チャレンジ枠」の4枠があります。対象者・経費・補助率・上限額等は、それぞれ異なります。
どの枠を検討する?
1.親族や従業員への承継に向けた設備投資
事業承継促進枠は、5年以内に親族内承継又は従業員承継を予定している方などが検討する枠です。承継に向けた設備投資や店舗・事務所の改築等について、要件を確認します。
「設備を入れ替えたい」という話だけでなく、誰に、いつ、何を引き継ぎ、承継後にどのような事業を目指すかを整理しましょう。
2.M&Aを進めるための専門家費用
専門家活用枠では、買い手支援類型・売り手支援類型などに分かれて、M&Aに伴う専門家の活用を支援します。仲介・FA費用やデュー・ディリジェンス費用等について、経費ごとの条件を確認します。
FAは、M&Aの助言や手続きの進行を支援するアドバイザーです。デュー・ディリジェンスは、引き継ぐ会社・事業の財務や法務等を調査することを指します。
3.M&A後の経営統合
PMI推進枠は、M&A後の経営統合に関する取組を支援する枠です。PMIとは、引き継いだ会社・事業と、人員、業務、管理体制などを整えていく取組です。
事業を引き継いだ後に、誰が業務を管理し、既存顧客や従業員との関係をどう維持するかまで考えておくと、承継計画を具体化しやすくなります。
4.承継に関連する廃業・再チャレンジ
廃業・再チャレンジ枠は、事業承継やM&Aの検討・実施等に関連する廃業などの経費を支援する枠です。単独申請と、他の枠との併用申請では要件が異なります。
廃業する予定があるだけで申請できるとは限りません。これまでのM&Aの取組や、その後の計画も含めて確認が必要です。
売り手と買い手で、整理する内容は変わります
事業を譲り渡す側
まず、何を残し、何を引き継ぎたいかを整理しましょう。
- 会社全体を譲るのか、一部の事業を譲るのか
- 従業員の雇用や、取引先との関係をどう引き継ぎたいか
- 経営者個人の保証や、個人所有の不動産等をどう扱うか
- 引継ぎ後、経営者がどの程度事業に関わるか
事業を譲り受ける側
取得する目的と、引継ぎ後の運営を具体化しましょう。
- どの技術・顧客・人材・設備を引き継ぎたいか
- 現在の事業と、どのような相乗効果を見込むか
- 取得後の責任者や管理体制をどうするか
- 取得に必要な資金と、その後の運転資金をどう準備するか
売り手・買い手の立場だけでなく、株式譲渡か事業譲渡かなどの方法も、申請者や費用負担を確認する際のポイントになります。
専門家と契約する前に確認したいこと
専門家活用枠では、経費に関する契約・発注・支払いの時期が重要です。第16次公募要領では、交付決定日以降の補助事業期間内に契約・発注し、同期間内に支払いまで完了することなどが条件とされています。
採択と交付決定は別の段階です。「申請したから」「採択されたから」と判断せず、契約予定日と補助事業の期間を照合してください。
また、FA・M&A仲介費用は、「M&A支援機関登録制度」に登録されたFA・仲介業者によるものが対象です。専門家であれば誰への支払いでも対象になるわけではありません。
既に専門家との契約や基本合意をしている場合も、契約書、報酬の発生条件、締結日、支払日を整理して確認しましょう。
補助額だけで判断しないための費用整理
補助上限・補助率・上乗せ条件は枠や類型によって異なるため、本記事では一律の金額として案内していません。
まずは、必要な資金を次のように分けて整理してみてください。
- 株式や事業を取得するために必要な代金
- 仲介・FA、調査等の専門家へ支払う費用
- 引継ぎ後に必要な設備投資やシステム整備費用
- 承継後の人件費・家賃・仕入れ等の運転資金
そのうえで、どの支出について補助対象性を確認するかを決めます。異なる目的の支出を一括して「M&A費用」と扱わないことが、資金計画を整理する近道です。
補助金の入金までを含めて資金を準備する
専門家活用枠では、事業完了後の実績報告と経費等の確認を経て、補助金額を確定し、精算払いが行われます。採択時に補助金が入金される仕組みではありません。
先に必要となる支払いを確認し、自己資金や金融機関からの調達を含めて準備しましょう。見積書・契約書・請求書・支払記録などは、取引ごとに整理して保管します。
相談時にあると役立つ資料
相手先や承継時期が決まっていなくても、現在の状況から相談できます。次の資料があれば、確認を進めやすくなります。
- 会社・事業の内容が分かる資料
- 直近の決算書や確定申告書
- 譲る側・受ける側の関係と、承継方法についてのメモ
- 候補先との交渉状況や、希望するスケジュール
- 専門家との契約書・見積書、報酬体系が分かる資料
- 設備投資や引継ぎ後の運営についての計画
これは相談準備の目安であり、申請に必要な提出書類の一覧ではありません。電子申請に用いるGビズIDプライムの準備状況も確認しましょう。
事業承継・M&A補助金の準備をご相談ください
行政書士法人テンポートでは、承継の方法や取組の内容を伺い、検討する枠と申請前の確認事項を整理します。
支援内容・費用・役割分担を事前にご案内し、ご契約の範囲に応じて事業計画書の作成や補助金の申請準備を支援します。当法人への報酬が補助対象となるかどうかも、業務内容と公募要領に基づく個別確認が必要です。
「後継者への引継ぎを考え始めた」「M&Aの専門家と契約する前に補助金の条件を確認したい」という段階でもご相談ください。初回相談は無料です。
公式情報・参考資料
本記事は制度の概要と準備の考え方を紹介するものです。採択・交付・受給を保証するものではありません。申請時には、対象となる枠・類型の最新公募要領をご確認ください。